TAKESHIS'

陰と陽、表裏一体。
北野武の心を描いた映画である。
賛否両論甚だしい作品だ。

戦場のメリークリスマスみたいな始まり。
北野武らしいドンパチのシーン。


ビートたけしが、自分とそっくりの売れないタレントと会う。
―→●夢の中で、そいつの日常を見る。
――――→●その日常の中で、タレントが色々な悪夢を見ている。
ー→●タレントが夢から覚めて、武を殺しに行く。
ビートたけしが、目を覚ます。

戦場のメリークリスマスみたいな始まり。
北野武らしいドンパチのシーン。


丸の位置がズレているのは、夢の深さを表している。
作品はビートたけしの夢の中の話なのだが、
この夢の中で、たけしは売れないタレントと邂逅している。
ビートたけし本人の過去が、売れないタレント北野として描かれており、
同じ時間軸に、世界のキタノと足立区のたけしを置くことによって、
自身の心の奥底を表現しているようにも思える。


そう仮定した場合、夢の最深部で北野が見たタクシーの夢は、
笑いと心の闇が同一のものとして描かれているのが面白い。
「オレは、芸人だ」「オレは、不安だ」の両方のメッセージが、
物語の最深部で描かれているのである。


この映画を作製しているとき、監督本人が「オレはそろそろ死ぬ」と
思っていたらしい。その心の闇が、如実に現れているようだ。
あるいは、たけし自身の中にもともと、暗い部分が存分に存在していて、
それを出しまくったように思える。


この映画、キタノファンにとっては詰まらん映画だろうが、
たけしファンには最強の映画だ。
原題は「フラクタル幾何学用語だ。
小さな正三角形が、大きな正三角形の中に無数にある図を、
算数の教科書などでみたことがあるだろうが、
それを「フラクタル」という。
大を成す、相似形の小。どこをとっても、三角形なのだ。


つまり、「どのシーンをきりとっても、オレ」というような
主題があったのだ。


戦場のメリークリスマスも、ドンパチも、コントも、可愛そうなタレントも、
全てが、彼であるという事だ。